| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) D1-01 (Oral presentation)

立山高山帯におけるマルハナバチを介した植物種間相互作用

*増田 光,石井 博(富山大・理)

同所的に生育する植物種の間には,訪花者の獲得を巡る競合や共同誘引,訪花者の異種間飛行に伴う繁殖干渉など,訪花者を介した様々な相互作用が存在する.しかし,これまでの研究は,特定の植物種間の特定の相互作用に着目したものが多く,植物種間の相互作用を群集規模で網羅的に調べた研究は少ない.このため,こうした相互作用が,植物群集にどのような影響を与えるのかは良くわかっていない.

そこで本研究は,訪花者を共有する植物種間の相互作用を群集規模で評価するため,中部山岳国立公園立山の高山帯で,2011年7月2日-9月28日,計22回にわたり,以下の調査を行った.1)マルハナバチによる各植物種への訪花頻度,及びマルハナバチが訪れる17植物種の開花量調査.これらの調査はセットで行い,調査範囲(一周4.6kmの登山道沿い)を100mごと46区域に区切って記録した.2)マルハナバチの行動追跡調査.この調査では,マルハナバチがどれだけ異種植物種間を飛行しているのかを,マルハナバチが観察された地点から半径5m内の花構成と共に記録した.

その結果,いくつかの植物種で,他植物種が同所的に開花することで,マルハナバチによる訪花が増加することが示された.しかし,他植物種が同所的に開花することで,訪花が減少したケースは確認されなかった.これは,局所的なスケール(100m)では,訪花者の獲得を巡る競合よりも,共同誘引の効果が卓越しているからかもしれない.一方,ある植物種から別の植物種への異種間飛行は,同所的に開花している他種植物の割合が多いほど起こりやすかった.ただし,この傾向の強さが植物種によって異なるという証拠は得られなかった.

これらの結果は,同所的に開花する植物種間には,正と負の関係が同時に存在していること示唆している.こうした種間相互作用の強さは,同所的同時期に開花する植物種の構成によって決定されていると思われる.


日本生態学会