| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) D1-02 (Oral presentation)

マルハナバチの各個体は採餌方法や訪花植物種にどれだけ固執するか?: 4 つの訪花パターン(アカツメクサで正当訪花/盗蜜訪花、シロツメクサで正当訪花、 ミヤコグサで正当訪花)からの選択

*角屋絵理,石井博(富山大・理工学教育)

いくつかのポリネーター種では、集団としては複数植物種の花から採餌しつつも、個々の個体は同じ種類の花を連続して訪問する性質(定花性)が報告されている。定花性は植物種間の繁殖干渉を減らすため、この性質を理解することは、植物種間の相互作用を考える上で重要である。

これまで定花性研究の多くは、採餌における選択肢が2つしかない状況下で行われてきた。しかし野外では、しばしば同種のポリネーターが3種類以上の植物種から採餌している様子が観察される。また、マルハナバチなどは、同種植物の花でも、個体ごとに異なる採餌方法(正当訪花/盗蜜訪花)をとることがある。このように採餌の選択肢が多彩な状況で、「各個体がそれぞれの選択肢にどれだけ固執するのか?」「ある選択肢から別の選択肢への変更の起こりやすさは、選択肢の組み合わせによって異なるのか?」「異なる場合、その違いは何に起因しているのか?」は調べられていない。

そこで本研究では、セイヨウオオマルハナバチが同所的に4つの選択肢(アカツメクサで正当訪花/盗蜜訪花、シロツメクサで正当訪花、セイヨウミヤコグサで正当訪花)を持って採餌している群落(北海道旭川市)で、4日間に及ぶハチ個体の行動追跡とハチ個体が持っていた花粉団子の分析を行い、各個体がそれぞれの採餌の選択肢にどれだけ固執しているのか検討した。

行動追跡と花粉分析の結果はどちらも、各個体は基本的に同じ選択肢に固執するが、選択肢間の変更の起こりやすさは、選択肢の組み合わせによって異なることを示唆していた。ただし、これらの違いは、花色距離(花色の違いの程度)や採取資源の質(花蜜か花粉か)だけでは説明できなかった。

総じて、定花性を介した植物種間の相互作用は、同所的に生育する異種植物の種構成や、ポリネーターの採餌方法の影響を受けていることが示唆された。


日本生態学会