| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) D1-12 (Oral presentation)

流れの乱流成分が水生植物の生長要因に及ぼす影響

井倉貴人(埼玉大・理)

水の流れは、自然生態系の水生植物の成長および分布を規制する主要な要因である。生態系内の静水・流水中の水生植物は、洪水や水位変動による物理的要因水の移動によって様々な規模のストレスを受ける。流れによる波の衝撃および撹拌は、水生植物の形態および成長過程を変える。本研究では、強さの異なる乱流レベルでの水生植物のストレスの応答を観察し、成長ホルモンであるオーキシン(IAA)および酸化酵素活性の関係性を調べることで水生植物のストレス下での生長要因の解明を目的とする。研究対象として、沈水植物のホザキノフサモと浮葉植物のアサザを使用し、2種間の生長の変化を比較した。

植物の栽培は、57L水槽に水50L、砂10㎏を入れ、ホーグランドアーノン溶液5%で行った。モーターで水を撹拌して水槽内に波が起こるようし、撹拌速度によってLow、Highに区分した。撹拌速度は水深5~15cmで測定し、Low は1.67±0.21~0.94±0.02 cm/s、Highは3.35 ± 0.54~1.99 ±0.30 cm/sである。蛍光灯による光量は321 μmol/sm2で、午前6時から午後6時の12時間照射した。試料の分析は、アサザは約2日おきに葉・茎・根、ホザキノフサモは2週間おきに上部・下部に分け部位のごとに分析した。分析項目は、IAA、IAA酸化酵素活性、ペルオキシダーゼ活性、過酸化水素、サイトカイニン酸化酵素活性、クロロフィル、光合成最大収率、植物伸長を測定した。アサザは3週間、ホザキノフサモは約2か月間の栽培を行った。

本実験において、アサザとホザキノフサモは、異なる乱流レベルにより植物伸長およびIAA濃度が変化し、酸化酵素活性においてIAA酸化酵素活性が顕著に影響を受けることが明らかとなった。異なる乱流成分における植物伸長とIAA濃度およびIAA酸化酵素活性には密接な関係があることが示唆された。


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