| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) E1-07 (Oral presentation)

土壌食ミドリババヤスデの採餌活動が森林土壌のメタンガス吸収に及ぼす影響

濵田奈穂美(島根大・生物資源), *藤巻玲路(島根大・生物資源), 山下多聞(島根大・フィールド)

大型土壌動物のもつ土壌の耕耘や有機物の粉砕といった土壌構造改変作用は、しばしば土壌中の物質動態に大きく影響することが知られている。我々はこれまでに、森林土壌において高密度の個体数が報告されるババヤスデ属のヤスデの採餌活動が土壌の物質動態、とくに土壌メタン吸収速度に強く作用することを発見した(ESJ 57)。しかし、ヤスデの採餌活動には、土壌の物理構造の改変作用や新鮮な有機物を土壌に糞として混ぜ合わせる作用、腸内ガスなど様々な要因があり、それらのどの要因が実際に影響していたのかが不明であった。本研究では、島根県三瓶山の森林土壌に生育するミドリババヤスデの飼育実験を行い、土壌のメタンガス吸収に及ぼす影響の要因を明らかにする事を試みた。

ミドリババヤスデ成虫を三瓶山広葉樹林の鉱質土壌で飼育したところ、1週間後に対照区と比べて土壌のメタン吸収能の低下が認められた。しかし、新鮮落葉の添加によってメタン吸収能の低下は緩和された。この緩和作用は、針葉樹のリターに比べて広葉樹のリターで大きくなる傾向にあった。また、飼育土壌にはヤスデの採餌活動にともなう多数の坑道状の穴が観察された。そこで類似した形状の穴を土壌に人工的に掘り、坑道の土壌メタン吸収への影響を調べたが、顕著な影響は認められなかった。また、ヤスデそのものからのメタンの放出・吸収も観察されなかったことから、腸内ガスの影響も考えにくい。これらの結果から、大型土壌動物の糞として混ぜ合わされる有機物の性質が土壌メタン吸収能に作用していることが示唆された。


日本生態学会