| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) E2-18 (Oral presentation)

中立性の破れが種の豊富さのパターンに与える影響について

時田恵一郎,大阪大学

ハベルの中立モデルは,全ての種の個体当たりの出生率,死亡率,分散率等が等しいという中立仮説が批判されてきたが,その一方で現実の種個体数分布を定量的に予測する数少ない多種群集モデルのひとつでもあり,議論が続いている.理論的に興味深い問題は,現実の群集は中立でないことは明らかなのに対しなぜ中立仮説がそれほどまでに良い近似となるかという点である.これに関して,ZhouとZhangは,出生率が個体間で異なるような「ほぼ中立モデル」を調べ,完全中立モデルとは決定的に異なる振る舞いが見出されることから,中立仮説の妥当性に疑義を呈している.ここでは,彼らのモデルを拡張し,出生率だけでなく死亡率や分散距離も個体ごとに違いのある「格子ほぼ中立モデル」の振る舞いについて調べた結果を報告する.2種系における一方が絶滅するまでの時間や多種系の種個体数分布や種数面積関係のパラメータ依存性を調べた結果,完全中立モデルがほぼ中立モデルの良い近似になっている場合があることを見出した.さらに,それらの結果をもとに,長距離分散するが死亡率が高いパイオニア種とあまり分散しないが死亡率の低いストレス耐性の高い種の共存機構などについても議論する.


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