| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) G1-09 (Oral presentation)

沖縄島南部の市街地において粘着トラップで捕獲されたグリーンアノールのサイズ組成およびCPUEの季節変動

*石川哲郎(沖縄環境科学研究所),阿部愼太郎(環境省)

特定外来生物グリーンアノール(以下アノール)は、沖縄島南部に侵入しており、那覇市の市街地を中心に定着している。環境省では、2009年から小笠原のものと同じ粘着トラップを用いてアノールの駆除を行っている。

本研究では、2011年5~10月に沖縄島南部の市街地において粘着トラップで捕獲したアノールを用い、体長組成および捕獲効率(CPUE)の季節変化について検討した。粘着トラップで捕獲された個体の体長を計測するのは困難であるが、頭長を計測し、素手等で捕獲した個体の頭長-体長関係式を用いることにより、粘着トラップで捕獲された個体の体長を逆算した。

素手等で捕獲したアノールの体長は、雌雄でそれぞれ23.5~59.5 mm、25.5~74.5 mmであり、性的二型は明瞭であった。体長-体重関係を小笠原のものと比較すると、沖縄島の方が同じ体長でも体重が軽く、市街地の周辺では餌が少ないためであると推察された。また、雌雄の頭長-体長関係は、それぞれ強い相関で直線回帰した。

粘着トラップで合計20,401個体(388,993わな日)の脊椎動物が捕獲され、このうちアノールは23.4%(4,774個体)であった。逆算した体長組成の季節変化を見ると、6月中旬に加入した当歳個体は、成長が速いものでは約2カ月で体長50 mm程度に成長し、過年度生まれの雌と体長では区別がつかなくなった。当歳群と過年度生まれの群の体長組成が区別できる時期にそれぞれのCPUEの季節変化を見ると、過年度生まれ群のCPUEは時間と共に減少したが、当歳群のCPUEは6月後半から上昇し、7月後半以降は捕獲個体の80%以上が当歳群となった。すなわち、過年度生まれの成体については効率よく捕獲できたものの、当歳個体の加入を抑えられていないことが分かった。当歳群の加入を抑制するためには、繁殖が始まる4月以前から駆除を開始し、繁殖前の成体を可能な限り捕獲することが重要であると考えられる。


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