| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) G2-19 (Oral presentation)

在来対外来タンポポの盛衰を花粉干渉で統一的に説明する

*西田隆義(滋賀県立大),橋本佳祐,西田佐知子,金岡雅浩(名大),高倉耕一(大阪市立環境研)

われわれは、外来のセイヨウタンポポ(雑種を含む)が在来のカンサイタンポポを駆逐し、その一方で在来のトウカイタンポポを駆逐できない現象を研究してきた。その結果、セイヨウタンポポからの花粉干渉に対する感受性の違いが、駆逐の成否を決める主因であることを確かめた。しかし、その一方で、同じ在来タンポポであっても個体群によってセイヨウに対する優劣は大きく異なるようだ。たとえば、カンサイタンポポはその分布西限にあたる徳島、香川、岡山などではむしろセイヨウタンポポを圧する。このような現象は、「セイヨウタンポポの花粉に対する感受性と非感受性個体の割合が、種間や個体群によって大きく異なる」と仮定すれば、普遍的かつ単純に説明が可能となる。そこで、この仮定の妥当性について調べた。

徳島と岡山において、野外で花粉干渉が生じているかどうかについて野外調査を行い、徳島ではさらにカンサイタンポポに両種の花粉をつける人工授粉実験を行った。その結果、いずれの調査地においても、また人工授粉によっても、セイヨウ花粉による花粉干渉は検出されなかった。ただし、少数個体では人工授粉による結実率の低下が認められた。セイヨウはとくに徳島においては非常に劣勢であり、劣悪な環境においてわずかに生育するだけであった。雑種はいずれの調査地においても生育していた。

以上の結果を総合すると、カンサイタンポポのセイヨウタンポポに対する優劣が個体群によって大きく変わるのは、花粉干渉に対する感受性が個体群間で大きく異なるためと考えられる。そして平均的な感受性の違いは、おそらく感受性・非感受性個体の比率の違いによって生じているものと推定された。


日本生態学会