| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) H2-19 (Oral presentation)

混雑情報提供による効率的国立公園管理に向けた交通流シミュレーター

*石川健介(北大・環境), 愛甲哲也(北大・農学研究院) , 庄子康(北大・農学研究院) , 西成活裕(東 大・先端科学研究センター) , 佐竹暁子(北大・地球環境科学研究院)

知床国立公園では、利用客の集中する夏期に過剰な混雑により、最大1時間以上もの大規模な交通渋滞が生じている。その対策として、知床五湖は2011年から利用調整地区に指定され、認定ガイド制による利用制限を開始した。また夏期の一部では、カムイワッカ湯の滝方面への車輌規制を変更し、シャトルバスでの利用となった。

渋滞の緩和には集中利用のピークを下げることが効果的であり、それには混雑情報の提供が現実的である。本研究では、利用制度の変更に注目し交通流への影響を評価し、利用客への混雑情報の提供が渋滞緩和にどの程度寄与するかを、公園内の道路を模擬したセルオートマトンモデルを用いて推定する。

モデルでは、国立公園の入り口であるウトロから、二カ所の目的地である知床五湖およびカムイワッカ湯の滝までの区間を対象とする。公園内の道路を7.5mごとの長さに区切り、それぞれを一つのマスとする。一つのマスには最大で1台の車が入る事ができ、前のマスに車があると次のステップで後ろの車は前に進めず行列になると仮定する。ウトロから入った車は、分岐点で知床五湖とカムイワッカのいずれかを選択し、一定時間を過ごしたのちに再び分岐点で目的地に向かうか帰ることを選択する。ウトロからの車輌台数、分岐点での各目的地への選択確率、目的地での滞在時間および駐車許容量は、交通量調査により推定されたパラメーターを使用する。

2011年の調査では車輌規制のなかった7月には公園内では渋滞が発生せず、車輌規制が行われた8月では知床五湖で渋滞が発生した。利用客への混雑情報を提供した結果、情報に従う車の割合が高いとかえって渋滞が助長されてしまい、従う割合が低いと渋滞緩和に効果的である事が示された。これらの結果をもとに、公園の効果的な管理方法について考察する。


日本生態学会