| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) H2-21 (Oral presentation)

混交植栽人工林は生態系機能を高めるか?

長池卓男(山梨県森林研)

人工林の主な機能は木材を生産することにあり、それを効率的に発揮するために単一種の植栽が一般的に行われてきた。単一種植栽によって造成された人工林では、病害虫の発生や強風などによる一斉風倒などリスクが、複数種が植栽された人工林(混交植栽人工林)よりも高いことが指摘されている。そこで、これらのリスクを軽減させる新しい森林管理技術としての、混交植栽人工林が諸外国では注目されている。混交植栽人工林での物質生産機能は、単一植栽人工林よりも向上している研究も多いが、そうではない結果も少なからずあり、議論が生じている。また、草本群集などで活発に議論されている生物多様性―生態系機能関係における、樹木群集のモデル実験系としても混交植栽人工林は注目を集めている。本講演では、①これまでの混交植栽人工林での物質生産機能についての研究も踏まえて、そのメカニズムについて議論し、②混交植栽人工林での物質生産機能について、山梨県内の混交植栽人工林での結果を示す。後者に関しては、峡東地区のカラマツ―ヒノキ混交植栽人工林(69林分)では、20年生の材積で100-300m3/haと大きな変動があった。それぞれの樹種の単一植栽人工林での値を上回る林分もあれば下回る林分も見られ、施業の状況に応じて物質生産機能の向上は左右される。


日本生態学会