| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) J2-17 (Oral presentation)

ハクセンシオマネキにおける密度と配偶行動の関係

*青木美鈴, 和田恵次(奈良女・共生セ)

シオマネキ属の配偶行動には、地表面で交尾をおこなう(表面様式)タイプと巣穴内で交尾をおこなう(巣穴内様式)タイプの2タイプが知られており、いくつかの種で両タイプを利用することが知られている。特に、ハクセンシオマネキやシオマネキでは、地域集団間においても両タイプの利用頻度に差異が認められる。また、表面様式では、メスは複数のオスと交尾する一方、巣穴内様式では、オスはメスが抱卵するまで巣穴内に滞在する場合が多く、オスの適応度は、表面様式より巣穴内様式のほうが高いと考えられている。しかしながら、巣穴内様式は、放浪するメスと巣穴をもつオスとの間で行われる場合が多く、メスは巣穴を放棄して放浪するというコストが生じるため、両性の間で性的対立が生じると考えられている。このような配偶戦術は、パナマに生息するシオマネキ類で捕食圧や密度を変化させることによって、その頻度が変わることが報告されているが、ハクセンシオマネキやシオマネキの生息環境には、パナマのシオマネキ類で示されているような顕著な捕食者が存在していない。

本研究では、表面様式と巣穴内様式を示すハクセンシオマネキについて、個体密度と配偶行動の関係に焦点をあて、自然状態で個体密度の異なる場所(高密度区:18.11/m2, 低密度区:8.22/m2)での放浪メスの割合、巣穴内様式に関連した行動であるWavingオスの割合、および配偶行動様式の割合を比較した。

その結果、高密度区では、表面様式が40例、巣穴内様式が11例、低密度区では、表面様式が19例、巣穴内様式が4例観察され、両密度区間に差は認められなかった。また、放浪メスやWavingオスの割合についても、両密度区間に差はみとめられなかった。これらの結果は、生息密度がハクセンシオマネキの配偶行動様式に影響を与えるものではないことを示唆している。


日本生態学会