| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) K2-14 (Oral presentation)

オオミズナギドリの集団営巣地における定着性

*須川恒(龍谷大学深草学舎),狩野清貴(網野高校間人分校)

京都府舞鶴市冠島においては、集団営巣するオオミズナギドリに1971年から継続的な標識調査を行なってきた。ミズナギドリ類が集団営巣地内の小範囲へ定着していることは知られているが、冠島のオオミズナギドリがどの程度の範囲にどう定着しているかの検討はされていなかった。

1978年から標識範囲を島の一部の約0.6haの範囲(以下A地区と呼ぶ)に限定し、捕獲時には10m四方の方形区による位置情報の記録を行ってきた。また、A地区から約200m(130~270m)離れた調査区(以下B地区、0.6ha)で1988年~1998年に標識調査が行われていた。

1984年からはデータベースを作成して2010年までの標識情報を入力している。

今回は、オオミズナギドリの島への定着性を解明するため、A地区とB地区における標識記録から、それぞれの調査区での再捕(リターンおよびリピート)数に対して、調査区を超えた再捕がどの程度あるのかを紹介する。

A地区では1984年~2010年に14881羽の個体を標識し放鳥した。B地区では1988年~1998年に2229羽の個体を標識し放鳥した。A地区で放鳥した個体の再捕個体9866羽(リターン6690羽、リピート3176羽)のうち、B地区で確認されたのは9羽(0.12%、リターン8羽、リピート1羽)のみで残りはA地区で確認された。 

B地区で放鳥した個体の再捕個体2498羽のうち、A地区で確認されたのは2羽(0.08%、2羽ともリターン)のみで残りはB地区で確認された。

以上のように、両地区とも多くの個体が放鳥した地区で確認され、200mしか離れていない地区で確認されることは極めて少なく、オオミズナギドリの集団営巣地内における狭い範囲への高い定着性が示された。地区を超えて確認された少数例を検討すると、定着していた地区を変更したというよりは、飛び立ちに失敗して他の地区に紛れ込んで確認された例が多いと思われた。


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