| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) L1-04 (Oral presentation)

社会性アブラムシの兵隊階級の社会行動を統御するメカニズム

*柴尾晴信(東大院・総合文化),高梨琢磨(森林総研),沓掛磨也子(産総研),松山茂(筑波大・生命環境),深津武馬(産総研),嶋田正和(東大院・総合文化)

社会性昆虫のコロニーは生物システムの1つの極致といえるであろう。行動的・形態的・生理的に分化したさまざまな階級を構築する多数の個体が、局地的な環境入力に対して各々反応を示し、その総和が調和的かつ適応的なコロニーレベルの応答として出力される。単純な反応の総体からいかにして高度で複雑なシステムが創発してくるのだろうか? 本講演では、社会性アブラムシにおけるコロニー統合と迅速な可塑的応答のメカニズムについて報告する。

ハクウンボクハナフシアブラムシは、不妊の兵隊階級を産出する社会性アブラムシである。本種の兵隊は、若いうちは巣の掃除を行い、老齢になると防衛に専念する齢分業を示す。我々は、本種をモデルとして、社会性昆虫類のコロニーにおける協調と制御の仕組みを解明することをめざし、化学コミュニケーションに着目して研究を進めてきた。

今回我々は、(1) 兵隊のタスク遂行をうながす化学刺激に対する行動閾値が加齢とともに変化することで齢分業が生じること、(2)兵隊の日齢に沿った掃除から攻撃へのタスク転換のタイミングが、天敵の存在を知らせるフェロモンや化学シグナルなどの環境条件に応じて可塑的に変化すること、(3)経口投与によるオクトパミンレベルの上昇が行動の意思決定に影響すること、などを明らかにした。本講演では、「フェロモン」と「巣の匂い」を介した本種の兵隊階級の分業と社会行動の発現統御メカニズムについて考察する。


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