| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) M2-20 (Oral presentation)

東京湾で確認された微小二枚貝ガタヅキArthritica sp.(Galeommatoidea:Leptonidae)の生態

*碓氷裕史(東北大院・工学),景山良祐(東海大院・海洋),早瀬善正((株)東海アクアノーツ),木村賢史(東海大・海洋),西村修(東北大院・工学)

ガタヅキ(Arthritica sp.)は多摩川河口干潟や江戸川放水路など,東京湾各地で確認されている殻長1.5mmほどの微小二枚貝である.しかし,その分類,分布,生態に関する知見はほとんど得られていない.そこで,本研究はガタヅキの生態に関する基礎的な知見を得ることを目的として行った.

繁殖生態を解明するために,季節ごとの卵・胎貝の保有率を調べた結果, 6月から9月にかけて90%近い個体が卵または胎貝,あるいはその両方を保有していたため,繁殖期は夏季であり,同時的雌雄同体の生態を有するものと考えられた.さらに,発育段階の異なる卵および胎貝を同時に保有する個体も見られたため,短い周期で繁殖を繰り返すものと考えられる.

ガタヅキの温度耐性を調べた結果,水温が42℃に達すると生存が不可能となるものの,38℃までであれば生存率は100%であり,広温性であることがわかった.また,ガタヅキの塩分耐性を調べた結果,0,45,50‰では活動が見られなかったものの,塩分が5~30‰の範囲であればほぼすべての個体が活発な活動を示した.

本研究により,ガタヅキは広温性・広塩性であり環境の変化が激しい河口干潟に適応した生物であることがわかった.しかし,ガタヅキは移入種である可能性もあるため,分類や分布に関する知見を蓄積する必要がある.その上で,移入種であった場合は他の干潟生物に及ぼす影響を評価するために,生態に関する知見の更なる蓄積が求められる.


日本生態学会