| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-038J (Poster presentation)

生育地の分断化が多年生林床植物オオバナノエンレイソウ集団の各生活史段階の遺伝的多様性に与える影響

*渡辺崇史,杉木学,大原雅(北大・院・環境科学)

オオバナノエンレイソウ(Trillium camschatcense)は本州北部から北海道全域の落葉広葉樹林の林床に生育する多回繁殖型の多年生草本植物であるが、近年の都市および農地開発に伴う森林伐採により、北海道内のオオバナノエンレイソウ生育地も孤立・分断化が進んでいる。生育地の孤立・分断化の影響は個体数の減少をもたらすだけではなく集団の遺伝的多様性の減少をもたらし、適応度や環境変動への適応能力が低下し集団の存続が難しくなると考えられる。オオバナノエンレイソウでは、先行研究から集団サイズが小さくなると開花個体の遺伝的多様性が低下し、さらに種子の遺伝的多様性が低下することが明らかになっている。そこで本研究では生育地の孤立・分断化が将来の集団を形成する個体への遺伝的多様性に与える影響をみるため、各生活史段階レベルでの遺伝的多様性を評価することを目的として行った。具体的には集団サイズ、集団内の実生数そして種子および実生の遺伝的多様性に関する調査を行った。

調査は、自家不和合性を示す十勝地方のオオバナノエンレイソウ8集団で行った。各集団内に20m×20mの調査区を設置し、集団サイズと調査区の実生数の計測、そして調査区内に生育していた実生と、当年結実した種子を用いてマイクロサテライトマーカーを用いた遺伝解析を行い、種子と実生の遺伝的多様性の比較を行った。その結果、集団サイズと実生数との間に明瞭な関係性はみられなかったが、集団サイズが小さくなると実生の遺伝的多様性は低下し、また種子の遺伝的多様性が低下すると実生の遺伝的多様性も減少することが明らかになった。これより、集団サイズが減少すると、開花個体や種子の遺伝的多様性が減少するだけでなく、実生段階の遺伝的多様性も減少するため、次世代の集団はより存続が難しくなるものと考えられる。


日本生態学会