| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-155J (Poster presentation)

餌としてのセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシがナミテントウに与える影響

*加茂綱嗣,徳岡良則,宮崎昌久

アブラムシを捕食する天敵昆虫であるナミテントウは、自然環境下で農地周辺に生息するアブラムシを捕食して成長・繁殖し、その後農地に飛来する。しかし、農地周辺のどのような植生がナミテントウの成長に有利なのかについては不明であった。そこで、ナミテントウ幼虫に対する農地周辺に生息するアブラムシの餌適性とその寄主植物を解明することを目的とし、さまざまな寄主植物とアブラムシの組み合わせをナミテントウ幼虫に供して試験した結果、セイタカアワダチソウに寄生するセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシの餌適性は非常に低いことが判明した。ところが興味深いことに、野外ではナミテントウの成虫・幼虫ともにこのアブラムシを捕食している様子が観察される。本研究では、このアブラムシに注目してナミテントウに対する餌適性をさらに詳細に検討した。室内実験においてナミテントウの初齢幼虫にこのアブラムシを餌として与えると、2日以内にすべての個体が死亡した。2齢以降の幼虫に対して途中から餌をこのアブラムシに切り替えると、初齢幼虫より長い期間生存したが、蛹化に至る前にすべての個体が死亡した。また、ナミテントウの成虫も、このアブラムシを餌として与えると10日以内に全個体が死亡した。これらのことから、農地周辺の耕作放棄地等ではセイタカアワダチソウはしばしば優占種となっており、そこに寄生するセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシはナミテントウに捕食されているものの、このアブラムシはナミテントウの餌として十分に機能しないことが示唆された。


日本生態学会