| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-156J (Poster presentation)

ナラガシワとブナ科3樹種が優占する二次林におけるナラ類集団枯損

*伊東康人,藤堂千景(兵庫農技総セ),山崎理正(京大院・農)

カシノナガキクイムシ Platypus quercivorus が運搬する病原菌 Raffaelea quercivora によって引き起こされるナラ類集団枯損(ナラ枯れ)が,近年急速に拡大している.更なる被害拡大が予測される中,近畿地方中部から中国地方に広く分布するナラガシワ二次林での被害報告はほとんどない.そこで本研究では,今後の被害拡大を予測する基礎情報として,ナラガシワとブナ科3樹種(アベマキ,コナラ,ナラガシワ)が優占する二次林におけるカシノナガキクイムシの寄主木選択様式及びナラガシワの感受性を明らかにすることを目的とした.

調査地は兵庫県朝来市の連続する二次林約2haとし,調査地内に出現する胸高直径10cm以上のブナ科4樹種を対象として胸高直径と位置を測定し,2010年と2011年にカシノナガキクイムシによる被害の有無と生死を記録した.対象木の被害の有無と生死を応答変数とし,標高,胸高直径,樹種,株本数,周辺(5段階)の対象木及び前年被害枯死木の密度を説明変数,被害年を変量効果とした一般化線形混合モデルを構築し,変数選択と樹種間比較をおこなった.

被害確率には標高,株本数,胸高直径,対象木の密度(周辺6m)が正の影響,前年被害枯死木の密度(周辺15m)が負の影響を及ぼし,コナラ>ナラガシワ=アベマキ>クリの順に被害を受けやすかった.また,被害後の枯死確率には,標高が正の影響,対象木の密度(周辺15m)が負の影響を及ぼし,クリ>コナラ=ナラガシワ>アベマキの順に枯死に至りやすかった.これらのことから,カシノナガキクイムシは北部の高標高域から調査地に飛来しているが15m以内の近距離分散は行っていないこと,カシノナガキクイムシは寄主木の“群れ”を目指して飛来穿孔しているが、“群れ”が大きくなると穿孔対象が分散しマスアタックが生じる可能性が低くなること,ナラガシワの感受性はコナラと同程度であること等が示唆された.


日本生態学会