| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-302J (Poster presentation)

ススキ草原再生のための草地造成法の開発

*下田勝久(国際農研セ),井出保行(畜草研),小倉振一郎(東北大・農)

我が国の代表的な半自然草原の優占種であるススキ(Miscanthus sinensis Anderss.)は、重要な飼料植物だけでなくエネルギー植物としても注目されている。しかしながらその造成法はほとんど検討されておらず、簡易造成法の開発は、近年問題化している管理放棄されたススキ草原の再生にも重要である。そこで、以前に記録のある、ススキの穂の散布法や埋設法を検討したが、種子の飛散や、再生速度が遅く労力がかかるなど問題点が認識された。そこで、堆肥と澱粉を利用した簡易なススキの堆肥シードペレットを開発し、ペーパーバック法や従来行われた方法との比較試験を行った。試験は、長野県御代田町にある畜産草地研究所御代田研究拠点でおこなった。試験場内のシバ草地がコナラ2次林に移行した森林を伐採し、各手法による造成試験を行った(播種種子密度は同程度になるように設定)。その結果、すべての造成法において、林床のリター層はススキの草地造成の妨げになり、攪乱することが有効であることが明らかになった。また、ペーパーバック法との比較では、ペーパーバックの分解速度が遅く、実生の生育の妨げになることから、ペレット法の方が有効であった。さらに、ススキ種子の埋設法は、ススキの被度拡大速度がペレット法と同程度であったが、出穂数が少なく、堆肥による養分供給効果が高いペレット法の方が成熟したススキ草原を早く再生できることが明らかになった。ペレットの播種密度は、8個/m2と4個/m2で差はなかった。これらを総合すると、堆肥シードペレットによるススキの造成は非常に有効であり、ススキ草原の再生に活用できることが明らかになった。


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