| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-304J (Poster presentation)

高解像度航空写真画像を用いた景観区分と水鳥の種多様性:水位変動に影響されにくい浅場の構造を探る

*松永悠,服部昭尚(滋賀大・教育)

ラムサール条約登録湿地である琵琶湖では、湖岸のヨシ群落に多様な水鳥が生息すると考えられている。しかし、水鳥の多くはヨシ群落そのものを利用するわけではなく、その周辺の浅水域で、魚貝類の潜水採餌あるいは沈水植物等の水面採餌を行っている。したがって、ヨシ群落自体よりも多様な水深構造が多様な水鳥の生息に影響すると推察される。また、琵琶湖では水位が大きく変動するため、水深25 cm程度までの浅場を維持するには、緩やかに深度を増す地形が重要であると考えられよう。“緩やかな浅場”にはヨシ群落も発達しやすい。本研究の目的は、「水位変動の影響を受けにくい緩やかな浅場において水鳥の種多様性が高くなる」という仮説を検証することである。そこで、琵琶湖周辺においてヨシ群落が存在せず、水位が変動し、浅場を有する瀬田川洗堰下流域において、5観察区を設け、約7週間にわたり、高解像度航空写真画像上に直接、水鳥の全種類別個体数と各個体の存在位置および行動パターンを24回記録した。その結果、18種の水鳥が見られ、その多様度指数(H’ )の平均値は区画間で有意に異なっていた(ANOVA:F=37.9,p<0.0001)。多重比較検定では、H’ が高い2区画間、低い2区画間にはそれぞれ有意差はなかった。航空写真画像の色彩と目視による景観要素区分(陸地、浅場、深場、その他)により、面積を算出したところ、H’ の平均値は、「深場」面積との間に負の相関(r=-0.97, p=0.003,n=5)、「陸地」と「浅場」の合計面積との間に正の相関を示した(r=0.97, p=0.004)。本研究の結果は、“緩やかな浅場”仮説を支持し、高解像度デジタル航空写真画像の景観分析から水鳥の種多様性の高い場所を予測できることを示す。近年、ヨシ群落の再生が計画されているが、ヨシ群落そのものより“緩やかな浅場”を再生する必要があろう。


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