| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-033J (Poster presentation)

東日本大震災による津波が仙台湾海岸林の構造に与えた影響

*富田瑞樹,鴇田朋允(東京情報大・総合情報),平吹喜彦(東北学院大・教養),菅野洋,斎藤綾子(宮城環境保全研究所),原慶太郎(東京情報大・総合情報)

東日本大震災によって生じた津波が仙台湾岸砂浜海岸の海岸林に与えた影響を明らかにするために,2011年6~12月に仙台市宮城野区の南蒲生において林分構造を調べた.この海岸林は小砂丘と後背湿地の境界付近を縦断する運河によって海側と内陸側に分かれ,海側がより若齢である.本研究では,海側から内陸側までの海岸林全体を覆う帯状区(580m×40m)と,その一部を重複しつつ内陸側の海岸林を覆う大面積調査区(280m×240m)を設置した.胸高直径(DBH)が5cmを超える樹木を対象に,帯状区では種名・DBH・樹高・生死・被害様式(傾倒・曲げ折れ・根返り・流亡・立ち枯れ)を,大面積調査区では立木のみについて種名・DBH・生死・幹位置を記録した.また,帯状区を10m四方に区分して市松模様状に配置した方形区ではDBH5cm以下かつ樹高が2mを超える生存樹木について,方形区内に設置した2m四方の小方形区では樹高2m以下の生存樹木について,種名・樹高を記録した.帯状区の樹木については,内陸側では1113幹が出現し,アカマツは495幹,クロマツは466幹であった.広葉樹は,サクラ属やコナラ,ハリエンジュなどが確認された.一方,海側では1732幹が出現し,クロマツは1662幹,アカマツは43幹であった.広葉樹は外来種のハリエンジュのみが確認された.低比高で湿地が介在する内陸側では根返りや流亡による被害が多数みられた一方,高比高の海側では少なく,むしろ傾倒や曲げ折れが多くみられた.また,生存幹のほぼ全ては内陸側に限って確認され,無被害の生存幹はDBHが10cmを、樹高が7mをともに超える幹に限られていた.


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