| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-275J (Poster presentation)

河川性サケ科魚類の夜行性戦術に及ぼす環境要因

*田中友樹(北大院環境科学), 小泉逸郎(北大創成研)

哺乳類や鳥類など多くの陸生動物は、種ごとに異なる活動時間帯を持っている。日中と夜間では光条件が大きく異なるため、昼行性と夜行性を変化させることはほとんどない。一方、いくつかの河川性サケ科魚類では、通常は昼行性であるが冬期に夜行性となることが知られている。光の少ない状況下では摂時効率が著しく低下することが確かめられているため、夜行性へのシフトは興味深い。冬期の夜行性シフトに関しては、捕食者仮説が提唱されている。つまり、高水温期には成長・代謝維持のため、捕食の危険を冒しても摂時効率の高い日中に活動しなければならない。一方、水温、ひいては代謝効率の低い冬期には、少量の餌で体を維持できるため、捕食のリスクを避けて夜間に活動する。しかしながら、餌量は重要な要素でありながら、過去の研究では餌量の季節変化がほとんど考慮されてこなかった。そこで本研究では、野外において水温および餌量がサケ科魚類の昼行性と夜行性に与える影響について、高水温および低水温の2つの河川において検討した。

調査は北海道の空知川水系において、2011年の7月に行った。低水温(7.1℃)と高水温(10. 9℃)の二河川において、オショロコマの活動時間を比較した。活動時間の指標には摂餌内容(胃内容物?)を用いた。また、河川を流下する餌を採集し、摂餌内容と比較した。その結果、両河川共に夜間と日中共に摂餌していることが示唆された。低水温区では日中に陸生昆虫、夜間に水生昆虫を少量捕食していた。一方、高水温区では日中に比べて夜間の方が水生・陸生昆虫の摂餌量が多かった。これらの捕食内容は流下昆虫の量・組成とほぼ一致していた。今回の結果では、(1)水温に関わらず昼夜において摂餌を行っていること、(2)流下する餌量との一致がみられたこと、から、水温よりも餌量が昼行性と夜行性の決定に影響している可能性があることが示唆された。


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