| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-283J (Poster presentation)

チョウセンカマキリの性的共食いが精子競争に及ぼす影響

*中本幸太郎, 高見泰興(神戸大・人間発達環境)

性的共食いは交尾の際に雌が雄を捕食する行動であり、節足動物でしばしば見られる。セアカゴケグモにおける先行研究では、雄の交尾回数がほぼ一回に制限されているため、性的共食いは雄のコストになりにくい。むしろ、性的共食いは精子輸送量を増加させるため、雄のベネフィットをもたらすことが知られている。しかし、カマキリでは雄が多回交尾できるため、性的共食いは雄にとって大きなコストとなると考えられ、雄は捕食を避けるような対抗進化をしていると予想される。そこで本研究は、チョウセンカマキリの性的共食いにおける①雄の捕食回避行動と②捕食された雄の精子競争におけるアドバンテージを解析した。

交尾行動の解析結果から、雄は雌の栄養状態が悪く、雄自身のサイズが小さいほど交尾を行わない傾向が見られた。つまり、雄は捕食リスクの高い雌との交尾を回避していると考えられる。また、先行研究より、雌に対して雄が前方からアプローチした場合に捕食リスクが高く、更にカマキリ類は前方と右方向の物体への反応が強いことが知られている。今回の結果では、雄のアプローチ方向にばらつきが見られたが、捕食リスクの低い方向を選好しているとは言えなかった。

「雌に捕食されながらも交尾に至った雄」は「捕食されなかった雄」よりも交尾時間が長い傾向が見られた。これは雄が最終的な投資を増加させ、捕食コストを埋め合わせている可能性を示唆する。交尾時間の増加により精子輸送量が増加する可能性があり、これらは精子競争における父性の獲得に影響しうる。そこで、父性の獲得への影響を調べるために、一頭の雌を二頭の雄(性的共食いの有/無)と交尾させ、マイクロサテライトとAFLPを用いた幼虫の父性解析を行った。

これらの結果を元に、性的共食いに対する雄の配偶行動の対抗進化について考察する。


日本生態学会