| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-337J (Poster presentation)

総合博物館としてのアライグマ防除の取り組み

*藤田宏之(埼玉県立川の博物館),羽田武朗(埼玉県立川の博物館),石井克彦(埼玉県立川の博物館)

総合博物館である埼玉県立川の博物館は、埼玉県北部の大里郡寄居町の一級河川である荒川の河川敷に立地している。広大な河原や河岸段丘の斜面林が隣接し、野生生物が多種確認されている。しかし、敷地内において各地で問題化されている特定外来生物アライグマProcyon lotorの痕跡が多数発見されている。地元自治体においても、本種の被害が顕在化し対応に追われている状況であり、総合博物館として人文・自然両分野の学芸員が得意分野を生かした防除の取り組みをおこなった。

はじめに敷地内の爪痕・足跡の痕跡調査をおこない、それを基にセンサーカメラによる調査によって敷地内で本種の姿を捕えることに成功した。センサーカメラで撮影された動物を紹介する企画展を開催し、パネルによって一般来館者への啓発をおこなった。さらに、地元自治体と連携し、2011年3月より敷地内においてかご罠による捕獲を実施し、本種成体2頭を駆除した。

当館では一般向け生涯学習講座として、学芸員による自然・人文両分野を織り交ぜたガイドウォーキングをおこなっている。寄居町内の寺社巡りウォーキングを実施する際、文化財の事前調査において、自然系学芸員が寄居町内の寺社において本種の多数の痕跡を発見した。ガイドウォーキング実施当日は参加者に痕跡の現場を見てもらい、本種の生態や被害状況を解説に織り交ぜて啓発した。さらに人文系学芸員の文化財調査に付帯して、自然系学芸員と協力して寺社で発見された痕跡の追跡調査をおこなった。その結果、痕跡を発見した寺社は寄居町内全域におよび、複数の寺社がねぐらに利用されている可能性が高いことがわかった。


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