| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-347J (Poster presentation)

アライグマ(Procyon lotor)低密度地域における既存の有害鳥獣駆除システムの問題と今後の管理課題について ‐国立公園に隣接した北海道洞爺湖町における事例‐

*渡辺祐太(酪農大・院),吉田剛司(酪農大・院),山本勲(UWクリーンレイク洞爺湖)

アライグマ低密度地域であると考えられている北海道西部に位置する洞爺湖町は,有害鳥獣捕獲が主なアライグマ対策となっているため,捕獲を実施しても捕獲効果は検証されていない.しかし,洞爺湖町は支笏洞爺国立公園に隣接または一部地域が含まれているため,アライグマの生息数増加は将来的に国立公園内への侵入を許してしまう恐れがあり,侵入および定着を未然に防ぐ対策が急務となっている.

本研究では,2011年6月から10月までの合計112日間,洞爺湖町において捕獲調査を実施し,アライグマの生息実態の把握に努めた.また,捕獲効率が極端に低下するといわれている夏季から秋季にかけては,ワナと同地点に自動撮影カメラを設置し,ワナ設置地点におけるアライグマの出現状況を明らかにすることで,従来の有害鳥獣捕獲の主な実施期間における捕獲作業の有効性を検討し,今後の管理体制について考察した.

期間内の捕獲努力量は790TNで調査期間中のアライグマ総捕獲数は12頭,捕獲効率は1.5となった.時期別,環境別にみるとトウモロコシの収穫期である8月から9月初旬までは畑内での捕獲が多かったものの,6月,7月の収穫期前では河川や沢沿いなど水辺環境における捕獲が多く,畑内以外での捕獲の有効性が確認された.また,夏季から秋季のワナ設置地点におけるアライグマの出現状況については,期間内に計20枚のアライグマが撮影されたものの,9月初旬から10月までの収穫期後にアライグマが捕獲されることはなかった.アライグマは繁殖能力の高さから,低密度下であっても急速な生息数の増加が懸念される.北海道においては春季における捕獲の有効性が確認されているため,今後洞爺湖町では,有害鳥獣捕獲だけに頼らず,生息状況に応じた防除の目標を立て,捕獲時期および捕獲地点を考慮した対策が必要である.


日本生態学会