| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-355J (Poster presentation)

オオハンゴンソウ(Rudbeckia laciniata L.)の生育と土壌化学性との関係

*水野創史(北里大院・獣医),髙川 優(北里大・獣医),山中耕平(北里大・獣医),馬場光久(北里大・獣医),杉浦俊弘(北里大・獣医)

青森県内では、特定外来生物オオハンゴンソウの繁茂による在来植物への影響が懸念されている。黒ボク土の発達している十和田地域において、オオハンゴンソウは土壌pHや有効態リン酸の低い土壌環境でも生育することが確認された(水野ら2010)。そこで本研究では、栄養繁殖に関係するオオハンゴンソウの地下茎に着目し、生育に対する土壌中のリンの影響を調べて、オオハンゴンソウの黒ボク土への適応について明らかにすることを目的とした。

オオハンゴンソウの地下茎の形態は、大きくて楕円形の「円盤形」と小さくて不定形の「その他」に分類された。地下茎が「その他」に分類されたオオハンゴンソウは、TR比が5以上と円盤形に比べて地上部重量の割合が大きく、草高が高くなると地上茎1本当りの地上部乾物重量が急激に増加した。また、この地下茎中のリン含有量は、土壌中の有効態リン酸が200 mg P2O5 kg-1未満の低リン土壌でも486~740 mg P2O5 kg- 1であった。一方、円盤形の地下茎は、大きいものでは直径が13~18cmに達し、地上茎は円盤の外周付近から出現していた。このような形態の特徴から、円盤形の地下茎上の中心部は、前年あるいはそれ以前に形成された「その他」に分類される地下茎であり、その周囲から新生地下茎が形成され、地上茎を伸長させることによって他の植物の生育を妨げていると推察された。

以上のことからオオハンゴンソウは、低リン酸土壌でも「その他」の小さい不定形の地下茎は多くのリンを含有し、地上部それも草高を高くする垂直方向への伸長を優先させる一方で、土壌中の有効態リン酸が増えると水平方向に新生地下茎を発達させることで、「円盤形」の地下茎を形成すると考えられた。


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