| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-036J (Poster presentation)

多雪地における幹先端部の力学的特性の樹種間比較

*野村拓真(京大・農),長田典之(京大・フィールド研),北山兼弘(京大・農)

積雪による雪圧は幹や枝を損傷させることで樹木の成長に影響を及ぼす。多雪地に生育する樹種は雪圧に適応しているが、雪圧の影響は種間で異なると考えられる。樹高成長に伴って高木種では幹の仰角が大きくなるが、低木種では幹の仰角が小さくなる(紙谷1984)。これは、高木種では成長すると完全には雪に埋まらなくなるが、低木種では成長しても冬には完全に雪に埋まるという、雪に対する成長戦略の違いを反映している。このような高木—低木種間の幹角度の違いには、幹の力学的強度が関連している可能性が高い。本研究では、多雪地である東北大学八甲田山植物園に共存する落葉樹の高木3種と低木3種の幹先端から50㎝部と100㎝部について、樹高に伴う力学的強度の変化様式を調べた。幹先端部は損傷を受けると樹高成長で不利になる、重要な部位である。力学的強度として、曲げ剛性(EI:曲がりにくさ)と最大曲げモーメント(Mmax:折れにくさ)に着目した。雪に埋まる個体では曲がりやすく(EIが小さい)、折れにくい(Mmaxが大きい)、EI/Mmaxが小さい幹が有利だと考えられるため、以下の2つの仮説を立てた。

①低木種は樹高とともに幹のEI、Mmax、EI/Mmaxが変化しない

②高木種は樹高が高くなるにつれて完全には雪に埋まらなくなるが、樹冠への積雪を減らすため、樹高とともに幹のEIとEI/Mmaxが増加する

結果は以下の通りである。

①低木種では、樹高成長とともにEI、Mmaxは3種とも変化せずEI/Mmaxは3種中1種のみで増加した

②高木種では、樹高成長とともにEI、Mmax、EI/Mmaxいずれも3種中2種で増加した

これらの結果を基に、樹高成長に伴う力学的強度の変化に関する意義や、力学的強度の要素である形態と材質の樹高成長に伴う変化について考察する。


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