| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-044J (Poster presentation)

シラカンバ産地試験地における開葉フェノロジーの系統間変異

平岡宏一,那須仁弥,大谷雅人,宮本尚子,佐藤新一(森林総研・林育セ),田村明,福田陽子(森林総研・林育セ北海道),高橋誠(森林総研・林育セ九州)

シラカンバは,日本各地に植栽されているが,我が国の現状では植栽に用いる広葉樹種苗に関する規則がない。このため広域での広葉樹種苗の流通による遺伝子攪乱が危惧されている。そこで本研究ではシラカンバに着目し,適応的形質の表現型変異と考えられる開葉フェノロジーを,産地試験地で調査した。また調査個体の核SSR遺伝子型を分析して、各個体の遺伝的系統を把握し,それらと開葉フェノロジーの関係について検討した。

1961年に設定されたシラカンバ産地試験地(北海道札幌市)において,北海道から本州中部地方に至る21産地48家系(個体)に由来する378個体を調査対象とした。各個体からDNAを抽出し,核SSRマーカー16座の遺伝子型を決定した。それらを先行研究のシラカンバの分布域全域を網羅する天然集団とあわせてベイズアプローチによる解析を行い,産地試験地内のそれぞれの個体の産地の遺伝的なクレードを決定した。また,開葉フェノロジーについて遺伝的クレード,産地および家系を入れ子要因としてモデルを作成し,ネスト分散分析を行った。

先行研究では,シラカンバの天然集団は北海道,東北および関東・中部の3つの遺伝的クレードに明確に分割された。遺伝分析の結果,産地試験地内の個体群もこれらの結果と一致した。これら3つの遺伝的クレードを用いて,ネスト分散分析を行った結果,全分散に対する寄与率の要因は,開葉開始日と終了日では,遺伝的クレード>家系>産地の順に高かったが,開葉期間では,家系>遺伝的クレード>産地の順であった。今後は,それぞれの産地の地理的位置や環境要因も合わせて解析を行う予定である。


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