| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-048J (Poster presentation)

温帯二次林における光合成速度・気孔コンダクタンスの季節変化

*浜田修子(名大・水研セ), 熊谷朝臣(名大・水研セ), 檜山哲哉(地球研)

温帯二次林において、落葉樹によって上層をおおわれている下層植生は、光条件が季節によって大きく変化する環境にさらされている。本研究では、このように上層の落葉樹をはじめとした、大きく分けて3層で構成されている林分において、それぞれの層における主要樹種のポロメータ観測を実施し、光合成速度・能力の季節変化を調べた。

4月中旬に着葉し、8-10月にかけて最も大きな光合成速度を示した上層の落葉樹に対し、中・下層常緑樹の光合成速度は3月に最も大きな値を示し、4月以降の上層木の展葉に伴い急速に減少した。10月以降、徐々に上層木の落葉が始まり12月中旬に急激な落葉が生じ、中・下層域へ入射する可視光域の放射量が増加した。それに伴い中・下層常緑樹の光合成速度も徐々に増加した。

自然環境条件下において、光飽和条件における光合成能力 (Vcmax_25; 25ºCにおけるカルボキシル化反応の最大速度) をそれぞれの層における主要樹種で調べた結果、上層落葉樹では展葉直後に最も大きい値を示し、その後緩やかに減少したのに対し、中層常緑樹では夏期に最も低く、上層の落葉に伴い徐々に増加し冬期に最大になる傾向を示した。また、単位面積当たりの窒素含量も同様の傾向を示した。このことから、上層木の落葉により中層以下の光環境が改善される冬期に、その層域で生育している植生が葉の窒素濃度を高め、光合成能力を上昇させていることが示された。


日本生態学会