| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-063J (Poster presentation)

酸素供給機能の異なる水生植物の低酸素ストレスに対する根の呼吸応答

*中村元香 (東大・理),中村隆俊(東農大・生物産業),寺島一郎,野口航(東大・理)

低酸素土壌に生育する水生植物は、シュートを介した大気から根への酸素供給(給気)により根の呼吸を維持しており、給気能力の高い種はより水深が深い低酸素土壌に生育できると考えられている。しかし、異なる給気能力を有する種でもしばしば同所的に生育することから、給気による酸素アベイラビリティの違いに応じた根の呼吸応答も重要だと考えられる。さらに、生育地では、しばしば急な冠水により給気が抑制されるため、根の呼吸はこのような短期的な酸素アベイラビリティの変化に迅速に対応する必要がある。低酸素下での生育には、呼吸による酸素消費あたりのATP生産効率を高めることが有利に働くと考えられる。しかし、植物は低酸素ストレスで生じるミトコンドリア電子伝達鎖の過還元状態を回避するために、ATP非共役経路のオルターナティブ経路を活性化させATP生成効率を低下させる。また、植物は低酸素に曝されると、組織内の無酸素状態を回避するために、解糖系中心の嫌気的代謝への切り替えやATP消費の削減により酸素消費を抑える。これらの呼吸応答は種により様々なため、給気能力の異なる種間では酸素アベイラビリティの変化に対し、効率的なATP生産とストレス回避とを両立するための応答が大きく異なる可能性がある。そこで本研究では、給気能力は異なるが水深の深い土壌に生育する水稲とヨシ、また水深が浅い土壌に生育する陸稲を用いて、高・低酸素条件で水耕栽培を行い、根組織内の酸素濃度を微細酸素電極で確認するとともに、酸素濃度の変化に対する呼吸速度、オルターナティブ経路の最大活性、ATP・ADP濃度、解糖系・TCA回路の主要酵素の活性を比較した。また短期的に冠水処理を施すことで給気を抑制し、上記の項目を測定した。これらの比較から給気能力の異なる種間の低酸素に対する呼吸系の応答の違いを考察した。


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