| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-082J (Poster presentation)

成長か?繁殖か?アブラチャンとシロモジにおける資源配分パターンの違い

*五十君友宏(名大院・生命農), 松下通也(秋田県大・生物資源), 中川弥智子(名大院・生命農)

有性繁殖と栄養成長への資源配分におけるトレードオフは植物の生活史戦略を反映し、その戦略は同所的に生育する種との共存を考えるうえで重要な役割を担っている。雌雄異株植物では雌機能と雄機能のコストの違いを容易に分けて考えることができるため、有性繁殖と栄養成長への資源配分パターンを検証するのに好適な材料である。また、クローナル植物では有性繁殖とクローナル成長への資源配分におけるトレードオフが存在することが知られている。そこで本研究では、同所的に生育するクスノキ科クロモジ属の萌芽性雌雄異株低木2種、アブラチャンとシロモジを対象として、有性繁殖とクローナル成長、栄養成長への資源配分パターンの違いを明らかにすることを目的とした。成長については、これまでの我々の研究によりアブラチャンの方がシロモジより肥大成長量が大きく、株内主幹から萌芽幹へ同化産物を積極的に転流していることが分かっている。

有性繁殖への資源投資量RIと、光合成器官への資源投資量VIとの比RI/VIは、雌雄それぞれシロモジの方がアブラチャンより大きい傾向を示した。萌芽幹生産への資源投資量CIはアブラチャンの雌と雄、シロモジの雄と比較してシロモジの雌が大きかったが、CI/VIは種間および雌雄で同程度だった。以上の結果と先行研究による成長の結果を合わせて考えると、アブラチャンではRIが少ないのに対して、幹の肥大成長量が大きく、株内主幹から萌芽幹へ積極的に同化産物を転流しているため、有性繁殖よりも栄養成長とクローナル成長を重視している可能性が示唆された。一方、シロモジではRIが多いのに対して、幹の肥大成長量が小さく、株内主幹から萌芽幹への同化産物転流量が少ないため、栄養成長とクローナル成長よりも有性繁殖を重視している可能性が示唆された。


日本生態学会