| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-176J (Poster presentation)

基礎データの誤差が分布予測に与える影響

*平山寛之, 粕谷英一 (九大・理・生態)

生物の保護のためにはその生物の分布を把握する必要がある。現実には生物のすべての分布範囲を調査することは不可能であるため、生物の分布推定モデルが広く利用されている。分布モデルを使用することで特定の調査地点の生物の有無(あるいは個体数)と気候や地形、土地利用などの環境情報の基礎データから実際には調査していない地点であっても潜在的なハビタットを推定し、その保護に活用することができる。近年、このような分布推定モデルは目覚ましい発展をとげ、様々な手法が提案されている(GLM, Maxent, RandomForestなど)。

正確な分布推定を行う上では得られる情報の誤差をできるだけ小さくする必要がある。生物の分布情報に関しては、様々な偏り(誤差)が生じうることが認識されてきた。たとえば地点間で調査努力量が異なるような場合は、調査努力が大きい地点に分布データが偏ることになる。こうした生物分布データの誤差は推定時に調査努力量などで重みづけするなどの対策が取られてきた。しかし、生物の分布データだけではなく気候や地形、土地利用といった基礎データにも誤差が存在する可能性がある。単純なものであれば測定時や数値変換の際に誤差が生じうる。また、基礎データはある区画内で代表値(区画内での平均値や最大値、あるいは特定の地点での計測値など)として設定し、分布推定に用いることがふつうである。どのように区画を設定するか、あるいは区画のサイズの大小によって基礎データの代表値は変化し、結果として誤差をもつ可能性がある。本講演では基礎データに人為的に誤差を与えた場合、推定結果にどのような変化が生じるかを検討し、これまで着目されてこなかった基礎データの誤差の重要性について議論する。


日本生態学会