| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-205J (Poster presentation)

里山放置林における植生管理が冬季の鳥類群集に及ぼす影響

*鈴木賀与(近畿大・農),桜谷保之(近畿大・農)

里山林は、1950年代以降の燃料革命により薪炭林や農用林としての機能を失うと共に管理放棄が起こり、特定の照葉樹種の優占、ツルやササ類の繁茂、景観・生物相の変化など様々な問題を抱えている。また、日本の生物多様性の危機の一つにも自然に対する人間活動の低下による影響が挙げられており、現在の里山林は顕著にこの危機にさられている。こうしたことから、里山林の保全は生物多様性維持の重要な課題だと考えられる。里山林の管理方法の一つとして、下層植生の管理が植物の種多様性に寄与することが明らかになっている。しかし、このような下層植生の管理が動物種に与える影響についての知見は乏しい。

そこで本研究では、下層植生の管理が鳥類に与える影響について調査し、鳥類保全の観点からみた適切な里山林管理方法の検討を行うことを目的とした。

調査は奈良県奈良市郊外に位置する近畿大学奈良キャンパス内の放置里山林(アベマキ‐コナラ群落)で実施した。調査地に約35m×35mの調査区を7区設定し、そのうち3区を対照区(下層植生の管理を行わない)、2区を弱度管理区(選択伐採を行う種の幹数の約50%を伐採)、2区を強度管理区(選択伐採を行う種をほぼ全て伐採)とし下層植生の管理を行った。各調査区の下層植生の伐採は、2011年10月から11月の間に行った。鳥類調査は定点調査により行い、調査区内で観察された鳥類の種、個体数、行動、利用していた階層を記録した。調査時間は1地点あたり20分間とし、降水のある日は避けた。調査は原則として週に1回、月に4回以上となるように行った。

その結果、2011年5月から12月までに鳥類は全体で25種1109個体確認された。各調査区における鳥類の種多様度や群集の重複度を比較することにより、下層植生の管理が冬季の鳥類群集に与える影響について検討する。


日本生態学会