| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-217J (Poster presentation)

東北地方太平洋沖地震の4カ月後の岩礁潮間帯生物群集:地震前後のデータを用いた地盤沈下と津波の影響の評価

*飯田光穂., 萩野友聡., 深谷肇一., Alam, A.K.M.R., 野田隆史.(北大院・環境)

東北地方太平洋沖地震による地盤沈下と津波は岩礁潮間帯の生物の数や分布に大きな影響を及ぼしたと考えられる。こうした地震の影響を正確に評価するためには、同一地点における地震前後の生物の数と分布のデータが必須である。さらに、地震の影響がなくても個体群は時間変動するため、地震前後の個体群の変化が定常状態の変動とどの程度違うかを知る必要があるので地震前の複数年のデータを用いた解析が有効である。

2002年から2010年の7月に三陸の5海岸のそれぞれ5岩礁の計25ヶ所に中央は平均潮位となるように縦1m横50cmの永久方形区を設置し、固着生物の被度と移動性ベントスの個体数を計測した。2011年の7月には全永久方形区を上方に1m広げ、地震前と同様の調査を行うと共に地盤沈下の幅を計測した。

2010年と2011年で優占種の帯状分布を比較すると、多くの固着生物において帯状分布の位置は下方に移動したが、その垂直幅には変化がみられなかった。一方、移動性ベントスでは帯状分布の位置とその垂直幅の変化は種によって様々であった。

地震前後の個体群の変化が地震によるものであるかを厳密に評価するために、地震前後で同一の潮位(平均潮位の上下50cmの範囲)(比較法1)と地震前後で同一の地点(地震前の永久方形区の範囲)(比較法2)でアバンダンスと個体群変化率の地震前後の差を求め、この値を地震前の年変動幅(標準偏差)で標準化することで地震による効果サイズを求めた。その結果、多くの固着生物で、比較法1と2のどちらにおいても被度と個体群変化率は地震により有意に減少していたが、チシマフジツボでは、比較法1と2のどちらにおいても被度は地震により増加し、比較法2では個体群変化率も地震により増加したことが分かった。一方、移動性ベントスでは、どちらの比較法においても個体数と個体群変化率への地震の影響は種によって様々であった。


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