| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-309J (Poster presentation)

熱帯山地林における植物リター中ポリフェノールが地形に伴う窒素可給性の変化に与える影響

*市塚友香(京大・農),潮雅之(京大・生態研セ),北山兼弘(京大・農)

植物の二次代謝産物であるポリフェノールは、タンパク質と難分解性の複合体を形成することで土壌の窒素可給性を低下させる。そのため近年、低窒素可給性の土壌に適応した植物がより多くのポリフェノールを生産し、さらに土壌を低窒素可給性にする戦略を持つという仮説が注目されている。一方で、地形に伴い土壌の窒素可給性が変化することはよく知られているが、植物中のポリフェノールを介して植物‐土壌間相互作用に及ぼす影響はほとんど研究されていない。そこで本研究では、森林生態系において地形的位置が植物リター中ポリフェノールを介して土壌の窒素可給性へ与える影響を調査した。

本研究はボルネオ島、キナバル山熱帯山地林の地形プロットで行った。このプロットでは先行研究によって窒素無機化速度は斜面上部で低く、下部で高いことが明らかになっている。斜面上部、中部、下部の表層土壌およびリターを採取し、ポリフェノールのタンパク質複合体形成能力(PCC)、有機態炭素、全窒素の濃度を測定した。さらに地形間でのポリフェノール‐タンパク質複合体の分解過程の違いを調べるために、リター抽出液と標準タンパク質を混合し、人工的に複合体を形成させたものに各地形からの土壌を加え培養し、培養後の無機態窒素の濃度を測定した。

地形間で土壌およびリターの有機態炭素、全窒素の濃度に大きな違いはなかった。土壌のPCCおよびリターの分解のしにくさを示すと考えられるPCC/Nは斜面上部で有意に高かった。また、ポリフェノール‐タンパク質複合体と土壌を培養した実験では、アンモニア化速度が斜面上部で低い傾向が示された。以上の結果より、斜面上部ではPCCの高い植物リターによって土壌の窒素可給性が制限されている可能性が示唆された。


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