| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-317J (Poster presentation)

硝酸の酸素と窒素同位体比を用いた由良川流域における窒素供給源の評価

*鈴木伸弥(京大 農) 吉岡崇仁 福島慶太郎(京大 フィールド研) 福崎康司 白澤紘明 大槻あずさ(京大 農)

近年の森林伐採や農耕地・市街地化といった流域全体にわたる土地利用変化は、河川へのNO3-負荷量を増大させると考えられるが、各土地利用におけるNO3-流出特性については明らかにされていない。水域生態系へのインパクトを最小限にする流域管理を考える上で、河川へのNO3-供給源を特定することは重要である。NO3-の窒素と酸素の安定同位体組成は供給源によって異なるため、NO3-供給源の評価に有用である。そこで本研究ではNO3-の窒素・酸素同位体比(δ15N、δ18O値)を利用して由良川流域におけるNO3-の供給源について評価するとともに、流域の土地利用が水質に及ぼす影響を推定することを目的とした。2010年4、7、8、11月に由良川流域の本流19地点、支流35点の計54地点で河川水サンプルを採取し、イオンクロマトグラフ法によってNO3-濃度を、脱窒菌法によってδ15N、δ18Oの測定を行った。また、各採水地点の集水域内の森林・農耕地・市街地などの土地被覆率を算出し、NO3-濃度や同位体比との関係について解析を行った。その結果、上流域で森林率が99%以上を占める採取地点ではδ15Nが低かったがNO3-濃度やδ18Oが大きくばらつき、NO3-濃度が低い地点ほどδ18Oが大きくなる傾向がみられた。このことから、森林では降水起源のNO3-の影響を強く受けることが示唆された。一方、NO3-濃度およびδ15Nは下流に行くほど上昇し、さらに森林率とは負の相関がみられた(4月:r = -0.54 7月:r = -0.48 8月:r = -0.75 11月:r = -0.33) (4月:r = -0.91 7月:r = -0.64 8月:r = -0.59 11月:r = -0.87)ことから、下流域では人為起源物資の流入が河川水のNO3-を規定していることが明らかとなった。


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