| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-323J (Poster presentation)

地域の文化を主題にした、環境学習プログラムの開発

*中江環(太地町立くじらの博物館)

博物館学芸員が地域の特性を活かした体験型の学習プログラムを提供することは、地域の博物館ならではの活動である。また、それを地域の人々と共に行うことは、地域の博物館を身近に感じてもらうきっかけになると期待できる。そこで、地域の特性を活かした環境プログラムを小中学校の生徒、教諭らと共同で開発することにした。

太地町は人口3,500人ほどの小さな町である。この町は古くから捕鯨発祥の地として知られ、現在も捕鯨を行うなどクジラとの関わりが深い。町内に位置する太地町立くじらの博物館は、「クジラの町」としての地域特性を持ち、年間10万人もの来館者を迎えるが、その多くは都市部からの観光客であり、地域の人々の博物館利用が極めて少ない。そこで、町の文化や自然をテーマにした新しい学習プログラム開発し、地域の人々の博物館利用を増やすことを試みた。現場の声を活かすため、開発の場には地域の小中学校の生徒や教諭に参加してもらった。プログラムのねらいは、1)子供に開かれた学びの場を提供する、2)地域の象徴であるクジラや海を身近に感じるきっかけを提供することに3)環境学習を取り入れる、4)専門的な技術や知識を身につけさせる、5)表現力を育成するという学校側のねらいを加えた5つの項目とした。開発にあたり、各種専門家や教諭を集めた議論の場を設けるなど博物館の利点を活かす工夫をした。

成果として新しい学習プログラムが完成しただけでなく、現職の教諭がプログラム開発に参加したことで、博物館を基点とした博学連携の基盤を構築することに繋がった。また、小規模コミュニティという地域の特性を活かして、小学校と中学校それぞれの学習プログラムを開発・実践したことにより、全国的にも難しいとされる中学校との博学連携の課題を見出すことができた。今後、中学校を対象とした定期的・継続的な博学連携システムの確立と小中学校との連携範囲の拡充が必要である。


日本生態学会