| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


企画集会 T03-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

現在の農業活動により維持される半自然草地の現状

山本勝利(農業環境技術研究所)

2010年に開催されたCOP10を機に農村環境における生物多様性への関心が高まり,里地里山に代表される二的な自然の重要性が指摘されている。わが国において絶滅の危惧に瀕している生物の中に、半自然草地に代表される草原性、または草原性依存の生物が多く含まれる。

かつて国土の30%以上を維持し広く分布していた二次草地(半自然草地)に至っては、都市化や農業形態の変化に伴い分布面積は1%あまりに減少している(小椋2006)。しかも、その現存する草地の多くは九州の阿蘇・久住連山や島根県三瓶山に代表される主に山地の野草地である。とくに農村周辺において広く分布していた半自然草地は、国家多様性戦略の3つ危機1)として示されている「人間活動の増大」、「従来の人間活動の縮小」、「新たな問題」により、分布面積の減少、種組成の劣化、外来種の侵入などの影響で急激な衰退が懸念されている。

そこで、本報告では農村に分布する二次草地である水田周辺の畦畔、法面や休耕田、東海地方(とくに静岡県域)並びに九州地方(とくに鹿児島県域)の茶生産地に残存する茶草場等に着目し、野外植生調査、地理的条件や立地条件の環境傾度、土地利用の変遷、管理等の状態について調査・分析を実施した。現在の農業活動により維持される多様性の高い二次草地の分布状況ならびに成立・維持機構を解明するとともに、指標種を用いた評価を紹介する。


日本生態学会