| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) B1-08 (Oral presentation)

プロセスベースドモデルによる森林管理の生態系サービスへの影響評価

*大場真,林希一郎,ダカール アンビカ(名大・エコ)

様々な森林管理・保全シナリオの元での森林生態系サービスを、森林モデル、コスト計算モデル、持続性評価指標によって評価した。

拡大造林によって植林され標準収穫期を迎えた人工林の問題が俎上に載せられ久しいが、その解決の糸口として森林生態系が持つ生態系サービスを評価することは重要であると考えられる。しかしミレニアムエコシステムアセスメントなどで示された生態系サービスは、統合評価のフレームワークを与えていないため、統合的な解決のためのシナリオの選定や施策提言がしにくいという問題を抱えている。

著者らは、様々な森林シナリオの元での森林生態系サービスを量的にモデルで推定を行い、かつそのシナリオ実施に必用な資源投入(コスト、労働力、土地)を推定した。これらの計算結果を元に、著者らが別に提唱している、ライフサイクルアセスメントを持続性評価のために修正した占有時間指標(Occupancy Rate Time)を用いシナリオの統合評価を行った。ケーススタディの対象として、愛知県豊田市内、旧旭町、旧稲武町の森林を選んだ(人工林 11,300 ha, 天然林 3,600 ha)。また占有率計算に必用な境界としてこの旧2町を選んだ(土地、労働力、炭素蓄積能力)

その結果、間伐や人工林更新などが主に炭素蓄積に関して有意に効果を持つことが理解されたが、資源投入を考慮するとその効果が低減されることが分かった。またこのシナリオでは土地利用が占有されたままとなる。不採算人工林の天然林への転換や間伐材の有効利用(火力発電所における石炭代替混燃)などを行うことによって、現状維持より有効な持続可能性シナリオが占有率より示唆された。


日本生態学会