| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) B2-14 (Oral presentation)

定量的な食物網の記載による相互作用強度の評価

*中川光(京大院理),竹門康弘(京大防災研)

京都府由良川中流の優占魚種7種とその餌生物の間の捕食被食相互作用の強さを評価するため、食物網構成種の生息密度および各魚種の一日あたりの摂餌量と各餌生物の利用頻度を5シーズン(4, 6, 8, 10, 12月)で調査した。各栄養リンクの相互作用強度を「魚体重1g、1日あたりの各餌生物の摂餌量」と定義した。また、各魚種の生物体量に基づき、単位面積あたりの相互作用強度(捕食圧)も推定した。その結果,年間を通して、7魚種と171分類群との間に合計473の栄養リンクが確認され、そのうち底生動物165分類群との間には460のリンクが確認された。各底生動物の出現時期には季節性が見られ、各季節で84–101の範囲の分類群数が観察された。また、魚類は一部の種が特定の季節に本流部からいなくなるとともに、水温の関数として推定された体重あたりの摂餌量はどの種でも冬期に大きく減少した。これらを反映して各栄養リンクは一年の特定の季節のみ観察されるものが98.5%を占め、各季節で観察された140–210のリンクの強度は季節的に変化した。こうした季節による相互作用強度の変異は、底生動物の生物体量および体サイズと正の相関を示したが、個体数とは有意な相関は認められず、魚類の餌選択性が体サイズや生物体量の大きな分類群に偏ることが、食物網内の相互作用強度のパターンを決定する原因であると考えられた。各餌生物に対する魚類の捕食圧は、各魚種の季節的な密度変化を反映して、個体あたりの相互作用強度よりも大きく季節変化した。これらの結果をもとに、本発表では、本研究の結果と食物網の相互作用強度の推定に従来用いられてきた捕食者被食者の体サイズ比に基づく方法による結果を比較する。さらに,野外での直接観察に基づく相互作用強度推定の利点と発展性についても考察する。


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