| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) B2-20 (Oral presentation)

国土規模の鳥類分布決定要因:景観の異質性が影響する時空間スケールの解明

*片山直樹(農環研),天野達也(ケンブリッジ大),山北剛久(JAMSTEC),小松功武(東大・農),高川晋一(NACS-J,),植田睦之(バードリサーチ),宮下直(東大・農)

生物多様性国家戦略2012-2020では、生物多様性の維持及び回復を長期目標として掲げている。目標達成には生物多様性を決めるプロセスを国土スケールで明らかにする必要がある。特に森林、農地や草地など土地利用モザイクから生じる景観異質性は、種多様性の保全に重要な役割を果たす。しかし景観異質性の影響や空間スケールの種間差は定量化されておらず、土地利用計画のための知見としては不十分である。本研究は、我が国で繁殖する鳥類57種を対象として各種個体数に景観異質性が与える影響を明らかにする。解析は環境省モニタリングサイト1000森林・草原および里地調査の314地点を用いた。目的変数を各種の個体数(対数)、説明変数を気候(年平均気温、年降水量、蒸発散量)、景観(局所森林率(50m)、森林率、多様度指数)及びこれらの2次項とした同時自己回帰(SAR)を行った。景観要因は半径500m~10kmのバッファを発生させ当てはまりの良い物を選択した。ここで森林率が中程度または多様度指数が高いときに個体数が最大になる種を景観の異質性が正に影響する種と定義した。それ以外の影響は負、また変数が選択されない場合は影響なしとした。結果、景観異質性の影響は全57種中27種で正、26種で負、4種で無しだった。また広域種・狭域種(定義:第6回自然環境保全基礎調査の確認メッシュ数300以上・未満)、普通種・希少種(県別レッドリストでの準絶滅危惧以上の指定が15県未満・以上)の比較も行った。どちらも景観異質性が正に影響した割合は前者が54%(25/46種)、後者は18%(2/11種)だった。結果をもとに、種間差の原因や近年の里山景観の変化が鳥類に与える影響について議論する。


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