| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) F2-15 (Oral presentation)

亜高山帯3樹種の幹の肥大成長に対する温暖化の影響評価

*高橋耕一(信州大・理),奥原勲(信州大・院・工学系研究科)

標高傾度にそった樹木の成長に対する温暖化の影響を明らかにするために,中部地方の亜高山帯で優占する針葉樹シラビソ(1600~2200 m a.s.l.),オオシラビソ(2000~2500 m a.s.l.),そして落葉広葉樹ダケカンバ(1600~2500 m a.s.l.)について,年輪年代学的手法を用いて調べた.分布上限と下限における,年輪幅と年輪内最大密度のクロノロジーを月平均気温と月降水量から予測する重回帰モデルを作成した.ただし,年輪内最大密度はダケカンバについては調べなかった.調べた計10クロノロジーのうち,3種の分布下限の年輪幅は気象データとの相関が低かったため,これらの関係はモデル化できなかった.中部地方では,2100年までに年平均気温は約3度,年降水量は約100 mm増加することが,計18通りの気候変化シナリオ(6種類の大気大循環モデル x 3種類の温室効果ガス排出シナリオ)から予測されている.温暖化の3樹種の成長に対する影響を調べるために,年輪幅と年輪内最大密度の予測モデルを18通りの気候変化予測シナリオを用いて計算した.その結果,オオシラビソの分布上限と下限の年輪幅と年輪内最大密度は2100年までに増加した.この増加率は温室効果ガス排出の多いシナリオほど高かった.一方,温室効果ガス排出シナリオに関わらず,シラビソの年輪内最大密度とダケカンバの年輪幅は2100年までに変化はなかった.したがって,この研究では温暖化に対する幹の肥大成長の応答は3種で異なっており,そして肥大成長の応答は年輪年代学的なモデルによって予測可能であることを示した.


日本生態学会