| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) F2-21 (Oral presentation)

アジアのブナ林・ナラ林の世界的位置づけ

*藤原一繪・原田敦子(横浜市大.院・生命ナノシステム科学)・志栄・王林・王正祥・湯茜・尤梅海

東アジアの温帯に広く分布するブナ類およびナラ類林について、植物社会学的に比較し、まとめた。日本のブナ林については、福嶋(2007)が研究史を詳細に記載している。またミズナラ林は星野(1998)、コナラ林は鈴木伸一(2002)が体系化している。これらは個々にデータ比較が行われているが、中国、ロシア、韓国などから発表されているデータとの比較や、東アジア全体の落葉広葉樹林の位置づけはまだ論じられていない。そこで、2002-2010年に収集した中国のブナ林・ナラ林の植生調査資料に、日本・韓国・ロシアの既発表資料を加え、5161資料(ブナ林1088、ナラ林4073)を総合常在度表で比較し、整理した。その結果、ブナ林は地域ごとの特異性が強く、それぞれ独立した植生単位を成立させていた。中国のブナ林は冷温帯林のモンゴリナラ林と分布を異にし、暖温帯の山地帯を中心に分布し、常緑広葉樹を伴う林分が多い特徴が見られた。韓国鬱陵島のタケシマブナ林は固有種を多く有し、日本のブナ林とも異なるクラスになると考えられた。ナラ林は韓国、中国北部~東北部、ロシア極東地域に分布する冷温帯のモンゴリナラ林、乾燥地域のリョウドウナラ林、中国中部低山地および韓国低地の暖温帯に分布するアベマキ等のナラ類林が区分された。中国と韓国のナラ林はブナ林との相違が明瞭であったが、日本のナラ林は特徴的な種群を持たず、ミズナラ林はブナ林との共通種を持ち、韓国済州島のミズナラ林も含め、いわゆるブナクラスにまとめられた。しかしコナラ林は共通種が限られ、韓国低地のアベマキ林、北京周辺のモンゴリナラ林と共に、さらなる検討が必要である。これらの特性を世界のブナ・ナラ林と比較し、類似性、相異性を整理した。2012年韓国モッポで開催された第55回国際植生学会シンポジウム講演発表資料を基盤に,検討を進めた結果を報告する。


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