| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) G2-17 (Oral presentation)

アリ共生はアブラムシの翅と飛翔筋を減少させる

八尾泉(北大院・農・昆虫体系)

Tuberculatus属アブラムシは,主にコナラ属樹木の葉に寄生し,本属の成虫は全て有翅虫になることが知られている。しかしながら,アリ共生型のT. quercicolaT. sp. Aは,ほとんど飛ばないことが集団遺伝構造と野外トラップ実験から明らかになっている。本研究では,野外操作実験を通して,共生アリがアブラムシの飛翔器官の形成と維持に及ぼす影響を調べた。アリ共生型アブラムシT. quercicolaをクローンで増殖させ,Y字形に分かれたカシワのシュートに同数ずつ導入し,アリ随伴・非随伴の2条件で飼育した。測定個体は,成長に伴う飛翔筋分解を避けるために羽化後2日以内の成虫を用いた。飛翔器官発達の指標として,中胸長,翅面積,中胸面積そして飛翔筋面積の4形質を測定・比較した。測定した形質の統計解析には,体長で補正した共分散分析を用いた。その結果,アリ随伴下アブラムシの飛翔器官4形質は,非随伴下のそれらに比べて有意に減衰していた。アリ随伴下のT. quercicolaは捕食者から守られていることを考慮すると,飛ぶ必要性は少ないと考えられる。そのため飛翔器官への栄養投資を割き,代わりに甘露生産増大や胚子数増加に投資していると示唆される。


日本生態学会