| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) H3-28 (Oral presentation)

北部九州における窯業の持続性と自然資源の分布

*林珠乃,市原猛志,丸谷耕太,内田泰三,横山秀司,山下三平(九産大・景観研)

地域の産業及び生活と風土との相互作用によって形成され、有形・無形の多様な要素によって構成される文化的景観は、豊かな地域性を有し生物多様性の維持に重要な役割を果たすと考えられることから、近年注目が集まっている。これまで、農林水産業が核となって形成される里山景観等の文化的景観の構成や変遷についての研究が多く行われてきた。身近な自然資源を活かした第二次・第三次産業もまた、独特の景観を呈すると考えられるが、これらの産業を基とした文化的景観に関する研究は少ない。

窯業は、特に陶磁器等の工芸品を生産する産地において、地域独自の文化を理解するために欠かせない産業である。北部九州の窯業は、伝統的には山から陶土や燃料を獲得し河川の水力を利用することにより生産を行ってきたが、民芸運動や燃料革命などの社会環境の変化に伴って、その生産構造は地域独自に推移してきた。本研究では、北部九州の窯業の里の文化的景観に焦点を当て、地域資源の分布と利用および景観の空間構造の変化を明らかにすることを目的とした。

福岡県朝倉郡東峰村は、小石原焼を産する窯業の里である。1669年に皿山地区で開窯して以来、周辺の山地から原土と薪を採集し、地区の中心を流れる河川の水力を利用して陶土を精製して陶器の生産が行われてきた。1950年代から活発となった民芸運動と燃料革命を受けて、窯元数が増加すると同時に、水力や薪に依存しない工法が多く採用されるようになった。

一方、東峰村から約9km南東に位置する大分県日田市小鹿田皿山・池ノ鶴地区では、江戸期とほぼ同数の窯元により、地域の自然資源を活かした伝統的な工法で現在でも窯業が営まれており、文化財保護法の重要文化的景観として選定されている。

これら二つの窯業の里の土地利用の変遷について報告し、景観構造の共通性と独自性について考察する。


日本生態学会