| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) J2-18 (Oral presentation)

延縄漁業おけるアホウドリ類の混獲分布に影響する要因

*井上裕紀子(国際水研), Phil Taylar(BirdLife International), 岡崎誠(中央水研), Richard Phillips(BAS), Henri Weimerskirch(CEBC, CNRS), Javier Arata(INACH), Graham Robertson(AAD), David Gremillet(CEFE, CNRS), 南浩史(国際水研)

個体数の減少が懸念されるアホウドリ類およびミズナギドリ類は、しばしば遠洋延縄漁船に偶発的に漁獲される。これら外洋性海鳥の混獲を防ぐためには、どのような状況で混獲が起きているかを予測することが必要不可欠である。これまでに、海鳥の分布密度と、漁船の分布を重ね合わせ、漁船の海鳥に対する干渉が指摘されてきたが、海鳥の分布と混獲数が実際どのように関連しているかを解析している例は少ない。本研究では、遠洋延縄漁船で混獲されるアホウドリ類について、まず、トラッキングデータと海洋環境、コロニーからの距離などとの関係から、南半球の分布密度を推定した。次に、予測した分布密度、生活史ステージ、混獲回避措置、投縄が夜間に行われる割合などが、それらアホウドリ類の混獲数にどのように影響しているかを検討した。

アホウドリ類の分布は、水温およびクロロフィルaに関連していた一方で、水深や底斜度とはあまり関連していなかった。コロニーからの距離は、生活史ステージ(繁殖鳥か非繁殖鳥か)とその種の移動範囲によって関連度合いが異なった。アホウドリ類の混獲数に水温などの海洋環境が影響していた。混獲回避措置を導入した場合、混獲数は少なくなった。分布密度が高いほど混獲数は多くなるモデルが選択されたが、係数が非常に小さく、分布密度以外の要因がより影響している可能性があるかもしれない。


日本生態学会