| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) J2-25 (Oral presentation)

モウソウチク林伐採後7年間の植生の構造と種組成の変化

*鈴木重雄(立正大・地球環境), 菊池亜希良(マレーシア工科大), 中越信和(広島大・国際協力)

竹林拡大が里山の植生分布に大きな影響を与えていることから,放棄竹林の広葉樹林等への転換や適切な管理手法の開発が求められている.本研究では,島根県大田市のモウソウチク林と隣接する広葉樹林において,地元NPOが2005年から行っているモウソウチク伐採に併せて行った調査より,伐採後7年間の植生回復過程を示し,伐採の効果と植生変化を明らかにする.

調査は非伐採竹林(A),伐採竹林(B),モウソウチクが侵入しつつある広葉樹林(C,D)にそれぞれ10 m四方の固定調査区を設定し,出現植物種の被度と全木本の胸高直径の記録を,2005年の伐採前から,2012年まで毎年行った.このデータより,各時期各調査区の胸高断面積合計,Shannon-Wienerの多様度指数を求め,各種の被度をもとにDCAによる序列化を行い,その変化を検討した.

伐採後の2006年から2008年にかけて,B区のモウソウチクの胸高断面積合計が増加し続け,高さもタケ以外の木本を越え,放置を継続すれば,モウソウチク林が再生すると考えられる状況となった.2008年以降は,毎年,再生したモウソウチクの除去を続けたため,2012年には新たに発生したモウソウチクはササ状の1本のみとなり,継続的な除去によって,モウソウチクを駆逐することが可能なことを確認した.種多様性は,伐採区で大きく変動したほか,A区においても2009年に多様度指数の上昇がみられた.これは,調査区外の竹稈が伐採されたことにより,林床の光環境が改善したことが要因であると考えられた.種組成は,DCA1軸に沿って,B区,A区,C区,D区の順で並んだ.これは,伐採跡地・竹林・広葉樹林の順であった.B区における伐採は,植物種組成を竹林から伐採跡地に変えたに過ぎず,広葉樹林への転換は進んでいなかった.


日本生態学会