| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-004 (Poster presentation)

格子モデルによる風散布植物の共存メカニズムの検証

*鈴木佳祐(静岡大・院・工),伊東啓(静岡大・院・工),柿嶋聡(静岡大・創造院),守田智(静岡大・工),上原隆司(静岡大・創造院),泰中啓一(静岡大・創造院),吉村仁(静岡大・創造院)

ほとんどの陸生植物系において種の多様性は非常に高く、自然界での競争種の共存は極めて普遍的である。しかし理論研究において、複数競争種の系では最も優れた種のみが生き残り、他の種は全て排除され絶滅してしまうことが示されている。この理論と現実の隔たりを埋めるべく、従来の格子ロトカボルテラ競争モデルに植物の定着率を加えたモデルを作成しシミュレーションを行った。その結果、多種の共存は種子散布方式(ローカル相互作用とグローバル相互作用)のいずれかに関わらず、種子の定着性がそれぞれの種毎、そしてそれぞれの格子点毎に違うことで可能になるということが示された。必要条件としての種毎の違いに加え、さらに場所毎の違いが加わることにより定着場所の多様性が増すことで多種の共存が可能になったのである。さらにこのモデルでは、従来のモデルでは起こり得ない強弱関係の逆転が起こることがわかった。パラメータで優れる種が絶滅し、劣っている種が生存することも珍しくなく、この事実からパラメータとして優れていることよりも定着率の高い場所が多いことが重要であることが示唆される。すなわち強いことだけでなく、適応することが種の生存戦略として重要であるということである。また共存可能種数は様々なパラメータの大きさに依存し、相対的に制限される。本研究では10種でのシミュレーションを行っているが、最大6種までの共存状態を作り出すことができた。このモデルは植物の多様性、特に温帯林の多様性についても応用できると考えられ、さらなる発展が期待できるだろう。


日本生態学会