| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-012 (Poster presentation)

渓畔林樹木群集における幹肥大成長量の20年間の階層別変動

*杉浦大樹,星崎和彦(秋田県大・生物資源), 星野大介(国際農研セ),松下通也(秋田県大・生物資源)

樹木は様々な環境要因の影響を受け、個体数や成長量を変化させる。それらの要因が樹木に与える影響は群集で異なると考えられており、種ごとの環境要因に対する感受性の違いから森林の動態が検証されてきた。また、個体ごとの環境要因に対する感受性の違いの検証により森林の動態の仕組みをさらに明確にできるが、群集レベルで種間および個体間の感受性の違いを比較した研究は限られる。そこで、本研究では個体数の変化や成長量の変動に関する個体間の違いを群集レベルで定量化した。

岩手県奥羽山系にあるカヌマ沢渓畔林試験地には豊富な種木種が共存しており、同じ土地条件で樹木の成長量の変動を群集レベルで検証する上で適している。本発表では毎木調査が毎年行われている1.0haプロットの9年間(2003-2012)のデータから、本数の多い林冠木6種(サワグルミ、ブナ、ミズナラ、カツラ、イタヤカエデ、トチノキ)を対象に個体数の変化を解析し、そのうち上層の個体を対象に成長量の変動を解析した。

個体数の変化では個体群動態や階層変化において種間で違いがみられた。特にサワグルミでは高成長、多死亡、多加入という特異的な種特性がみられた。また、6種の成長量の変動パターンを年間・年内および個体間・個体内のばらつきの違いによって分類したところ、種ごとに異なる傾向がみられた。特にイタヤカエデでは全てのばらつきが大きく、サワグルミでは全てのばらつきが小さくなる傾向がみられた。このように、個体数や成長量を変化させる要因に対する感受性の違いは種間で異なると考えられ、今後は環境要因を含めた感受性の違いを検証していく必要があると考えられる。


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