| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-013 (Poster presentation)

中国内蒙古自治区額済納の胡楊林の生育環境が林分構造に与える影響

*李暁剛(岡大・環境),張国盛(内蒙農大・林),李玉霊(河北農大・生態),王林和(内蒙農大・生態),吉川賢(岡大・環境)

オアシスとは、砂漠の中で局所的に出現する「乾燥地でありながら水のある」特殊な環境である。オアシスで植物が利用する水のほとんどは河川水と地下水であり、比較的安定な水環境で生育している。しかし、中国北部の額済納オアシスの地下水はそこを流れる黒河の水量に左右されている。近年、中流域での人口増加と農業開発によって、流量が大きい減少し、オアシス内の胡楊(Populus euphratica)林は慢性的な乾燥ストレスを受けて、衰退が進んでいる。

本研究は、乾燥ストレス下での胡楊林の維持メカニズムを解明するために、オアシス内の胡楊林に100m×100mの永久プロットを設定し、2009年、2010年、2011年、2012年に毎木調査(木の位置、生存高、樹高2m以上の木のDBHと枝張り、枯死高)を行った。2010年には地形と土壌ECを測定した。

樹高の頻度分布より、樹高2m以上(成木)と以下(幼木)の二つの個体群が一つの林分に共存していることが明らかとなった。成木の個体数は比較的安定しているが、幼木の個体数は年によって大きく変動した。しかし、幼木の個体群から成木の個体群(林冠層)に移行する個体は限られていた。SADIESで分析したところ、胡楊の生残個体も新出個体もEC値との間に正の関係を示した。成木、幼木、稚樹はいずれも窪地を避けるように集中分布をしていた。その結果、成木+幼木、稚樹、EC値はいずれも同所的分布を示し、分布域が重なっていた。

したがって、胡楊は塩類集積地を好んで生育しているような印象をうけるが、塩類が生育に有利に作用することは少ないと考えられる。本種は水たまりに落ちた種子が岸辺に吹き寄せられた後発芽する場合が多く、生育適地の解明のために地形要因をさらに検討する必要がある。


日本生態学会