| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-023 (Poster presentation)
地形は樹木の分布を決定する環境要因のひとつである。現在見られる樹木の分布と地形の関係は、斜面の位置や形状で異なる土壌の性質、攪乱の頻度などが樹木の生残や生長に影響を与えることで生じる。長寿で巨大に生長している大径木の立地はその個体ないし、種の生残や生長に関する環境条件をよく反映しているものと考えられる。大径木は森林生態系において重要な役割を持つが、日本における大径木の種構成、密度、空間分布についての知見はあまり見られない。
本研究では、原生的な自然が残る奈良県大峯山系の中間温帯針広混交林 25 ha で、大径木 ( dbh 80 cm 以上と定義。) の分布する地形を GPS と 10 m メッシュの DEM を使って調べた。また、同じ地域内 4 ha で 10 cm ≤ dbh < 80 cm の成木が分布する地形を調べることで、現在の大径木の分布が成立するプロセスを考察する。
25 ha の範囲に 14 種 308 本 ( 12.3 本 / ha ) の大径木が出現し、胸高断面積 ( BA ) は 274.34 m2 ( 10.97 m2 / ha ) であった。このうちツガが約半数を占め、次にトチノキ、ミズナラと続いた。大径木の密度は dbh ≥ 10 cm の樹木全体のわずか 2.5% となったが、BA では 25.7% を占めていた。
大径木の分布する環境を解析した結果、ツガはどの地形にも偏っておらず、トチノキは緩傾斜、凹地形に多く、ミズナラは急傾斜、北向き斜面に多かった。また小中径木については、大径木とは異なった分布をする樹種が認められた。