| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-024 (Poster presentation)

シデコブシとタムシバ、それら種間雑種の実生の空間分布と消長

*谷早央理(名大院・生命農),玉木一郎(岐阜森文ア),鈴木節子(森林総研),戸丸信弘(名大院・生命農)

シデコブシとタムシバはモクレン科モクレン属コブシ節の近縁種であり、これまでの研究では2種間で雑種を形成することが明らかとなっている。しかし、成木を対象とした種間交雑の研究では、シデコブシを種子親とする雑種個体やシデコブシとの戻し交雑個体は確認されていない。したがって、成木に至るまでの間に何らかの生殖隔離が存在し、一方向的な交配が起こっている可能性が示唆されている。生育の初期である実生期は死亡率が高く、その動態は光や土壌水分などの生育環境の影響を受けると考えられていることから、実生の段階で淘汰を受けて交配の方向性が形成される可能性がある。そこで、本研究ではシデコブシとタムシバ、それらの種間雑種の実生の消長を調査し、種や雑種間で実生の生残や生育環境に違いがあるか検証することを目的とした。

調査はシデコブシとタムシバが同所的に生育する愛知県瀬戸市で行った。2012年6~10月に月に一度の間隔で樹幹長30cm未満の実生を対象として生残の追跡調査を行い、相対光量子束密度(rPPFD)と土壌体積含水率を測定した。また、マイクロサテライト遺伝子座を用いて遺伝解析を行い、実生の遺伝子型クラスを同定した。

調査の結果、実生の死亡数は8月に最も多くなり、種間や当年生か非当年生かによって実生の生残率は異なった。実生と環境要因との関係については、光環境と土壌体積含水率ともに種間や当年生か非当年生かによって差が認められた。したがって、シデコブシは湿地、タムシバは乾燥地に生育するという知見と一致した。今後さらに、遺伝子型クラス別に分類した種間雑種個体を含めて実生の生残に影響を与える要因を検討し、雑種の環境適応や実生の芽生えの段階における交配の方向性について考察する。


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